2025年6月22日、世界が注目する軍事行動が発生した。アメリカ合衆国は、イラン国内の核関連施設3カ所(フォルドー、ナタンツ、イスファハン)を精密空爆。これにより中東情勢は一気に戦争の次元へと突入した。
しかし日本にとって重要なのは、この出来事が単なる遠い国の話ではないということだ。エネルギー安全保障、邦人保護、日米同盟、そして経済的影響──さまざまな側面で我々の日常に直結する問題である。
空爆の概要と国際的反応
米軍はステルス性能を持つB-2爆撃機とトマホーク巡航ミサイルを使用し、イランの主要な核関連施設を同時に攻撃。これまでイスラエル主導とされてきた対イラン攻撃に、アメリカが初めて直接軍事介入した。
トランプ大統領は「イランの核開発能力を完全に破壊した」と発言。イラン側は「国際法違反であり、重大な報復に出る」と反発しており、緊張はさらに高まっている。
国連安保理は緊急招集され、欧州各国は米国の行動に懸念を示しつつも明確な非難を避けている。
邦人退避と自衛隊の派遣調整
空爆を受けて、日本政府はイラン在留邦人(約280名)に退避勧告を発出。6月21日までに66名がアゼルバイジャン、21名がヨルダンへ退避し、防衛省はジブチに輸送機2機と隊員約120名を待機させ、空輸に備えている。
政府関係者によれば「米軍の攻撃は事前に日本にも伝達があった可能性がある」との見方も出ており、裏での日米連携は強化されているとみられる。
自衛隊機による邦人退避は、現行法上の課題を抱える中での運用となるが、迅速な対応が求められている。
ホルムズ海峡とエネルギーリスク
最大の懸念は、イランが報復手段としてホルムズ海峡の封鎖に踏み切る可能性である。日本の原油輸入の約8割がこの航路に依存しており、封鎖されれば供給不安と価格急騰が現実となる。
現在のWTI原油価格は70ドル台で推移しているが、封鎖が現実となれば一気に100ドル超えも視野に入る。政府は国家備蓄の一部放出や産油国との緊急交渉を検討中だ。
同時に、電力・ガソリン・物流コストの上昇が家計と中小企業に直接打撃を与えることも想定される。
日本の防衛と外交戦略の再構築
今回の米軍空爆により、日米同盟の軍事的現実が一段と前面に出てきた。表向きは中立を保ってきた日本だが、地政学リスクが高まる中では、外交的にも軍事的にも立ち位置の明確化が求められている。
トランプ政権との関係強化により、対中東外交や防衛装備移転の加速など、新たな戦略的連携が進む可能性もある。
一方で、日本国内では「憲法9条との整合性」や「専守防衛の理念」との摩擦が再燃することも予想される。
遠い戦争ではない
アメリカによるイラン核施設空爆は、単なる軍事的ニュースではなく、日本にとってエネルギー・外交・安全保障すべてに関わる重大な局面である。
いま我々に求められているのは、“戦争は遠い世界の話”という認識からの脱却だ。情報を正確に見極め、現実に即した備えを進めること。それが、この激動の国際情勢の中で日本が取りうる唯一の道である。