はじめに──「結局どこに入れたらいいかわからない」人へ

選挙が近づくと、テレビやSNSで「誰に入れるか?」という話題が一気に増える。一方で、有権者の多くが抱えるのは「どの党も似たようなことを言っていて、違いがわからない」という感覚ではないだろうか。

今回は、参院選2025に臨む主要政党の公約を、いくつかの重要分野に絞って比較する。選ぶ軸を明確にすることで、「感覚」ではなく「自分に関係のある政策」で一票を考えるヒントになればと思う。

消費税・物価対策──“減税か、現金支給か”

物価高が続く中、最も身近なテーマが「家計支援」だ。各党のスタンスには明確な違いがある。

政党消費税対策
自民党減税には慎重。ポイント還元や物価高抑制策で対応。
立憲民主党食料品のゼロ税率や現金給付。緊急的な消費喚起策に重点。
参政党消費税は本来「廃止すべき制度」としつつも、まずは食料品非課税化を段階的に実施。貨幣制度の再考を提起。
公明党軽減税率の拡充、ガソリン税の時限的減免など。
共産党消費税は一律5%に減税し、将来的に廃止を目指す。
れいわ新選組消費税即時廃止+大規模な財政出動で家計支援。
日本維新の会減税より成長戦略重視。社会保障改革で持続性を追求。

子育て支援・少子化対策──「現金給付」だけでは足りない

出生数が激減するなか、次世代育成は各党に共通する喫緊の課題となっている。

政党子育て政策の柱
自民党児童手当の拡充、大学無償化検討、出産一時金の増額など。
立憲民主党教育無償化・所得制限の撤廃・給付型奨学金の拡充。
参政党「家庭こそ教育の基礎」として、道徳・歴史教育の再構築を掲げる。子育て世帯への直接支援+伝統的家族観の尊重が柱。教育現場の自由化も主張。
公明党幼児教育の無償化、母親支援、孤育て対策の強化。
共産党幼保一体型支援・無償化・教育関係者の待遇改善。
れいわ新選組ベーシックインカム導入+完全教育無償化。
日本維新の会教育バウチャー制度、子育て支援の地方分権型改革。

防衛・外交──“積極姿勢”と“平和主義”の対立軸

ウクライナ、台湾、朝鮮半島情勢など、安全保障環境が不安定化する中、各党の姿勢が分かれている。

政党防衛・外交方針
自民党GDP2%の防衛費、敵基地攻撃能力、日米同盟の深化。
立憲民主党日米安保維持、専守防衛、外交優先で抑制的。
参政党「自主憲法制定による真の独立国家」を掲げ、自衛のための防衛力強化・憲法改正を訴える。外交では国益と道義の両立を志向。
公明党防衛費増には慎重。専守防衛と外交重視。
共産党防衛費削減、自衛隊縮小、平和外交の徹底。
れいわ新選組防衛費は削減し、福祉・教育に財源を。
日本維新の会防衛費容認、日米連携強化、憲法改正を積極推進。

財源と経済政策──「バラマキ」とは何かを問う

どの党も「支援」を掲げるが、財源の考え方に差がある。

  • 自民・維新は「経済成長→税収増」型。民間活力を重視。
  • 立憲・共産は「富裕層・大企業への課税強化」による再分配重視。
  • れいわは「国債・通貨発行で大胆な支出」。MMT寄り。
  • 参政党は「グローバル金融依存の是正と中小企業支援の優先」を主張。政府と通貨発行権の見直しにも踏み込む。
  • 公明・社民は中間層・生活者支援を重視しつつ、財源明記は限定的。

結局、何を基準に選べばいいのか?

争点が多岐にわたる中で、以下のような視点が有効だ:

  1. 自分の生活に直結する分野から選ぶ
     → 子育て世帯、フリーランス、高齢者、学生など、立場によって重視すべき政策は違う。
  2. 理念ではなく、行動・実績を見る
     → これまで何をしてきたか、議会でどう振る舞ってきたか。
  3. “財源”を語る党かどうかに注目する
     → 支援策は聞こえが良くても、財源なき約束は絵に描いた餅。

政策で選ぶ習慣を

政党名やイメージで選ぶのではなく、公約という“公開された約束”をベースに選ぶ。それは民主主義にとって最も基本的でありながら、忘れられがちな姿勢だ。

2025年参院選は、社会保障、物価、憲法、外交といった「中長期的テーマ」が問われる選挙でもある。目先の話題にとらわれず、未来に影響を与える選択をするために、今こそ公約を「自分ごと」として読み解いていきたい。