“増税国家ニッポン”を問う 第1回

税収75兆円突破──なのに財政難?

2025年6月末、ひとつのニュースが大きな波紋を呼んだ。

「2024年度の国税収が75兆円台に達し、5年連続で過去最高を更新」

物価高による消費税収の増加と、企業の好決算による法人税収の伸び──。これだけ聞けば、日本の財政状況は改善しているように見える。だが、政府やメディアの口から出てくるのは、いつもの決まり文句だ。

「財政は厳しい状況が続いている。増税や歳出削減は避けられない」

一体、なぜなのか。なぜ税金をこれだけ集めていながら、「足りない」「厳しい」と言い続けるのか。そこには、財務省の一貫した“数字の物語づくり”と、それを鵜呑みにする政治・メディアの構造がある。

財務省の“収支トリック”──プライマリーバランスの呪縛

財務省が財政健全化の指標として使い続けているのが、「プライマリーバランス(PB)」である。これは、国の収入(税収など)から支出(借金返済を除く)を引いた黒字・赤字を示す指標だ。

一見わかりやすいが、問題はこの指標が“財政の全体像”を捉えていない点にある。

たとえば、国には約1300兆円の「借金」があるとされるが、実は同時に700兆円を超える“資産”も保有している。年金積立金、外貨準備、出資法人の株式、土地建物などである。これらはメディアでほとんど語られない。

また、日本政府の借金の大半は日本国内で保有されており、通貨発行権を持つ政府がデフォルトする可能性は低い。それでも「国の借金が大変だ」というイメージが広く流布しているのは、財務省のPB至上主義が長年にわたって教育・報道に影響を与えてきたからだ。

「収入が増えても支出を切る」逆転したロジック

さらに奇妙なのは、税収が増えても「増税しなければならない」「社会保障は切るしかない」と結論づけるロジックである。

過去最高の税収を記録しても、財務省の説明はこうだ:

  • 上振れ分は国債償還に回す
  • 防衛費の財源に充てる
  • 一時的な増収なので、恒久的な歳出には使えない

つまり、収入が増えても、使えるお金は増えないという説明になる。これでは国民に「何のために税金を払っているのか」という疑問が生じて当然だ。

消費税という“都合の良い税”

今回、税収が伸びた最大の要因は「消費税」である。物価が上がれば、そのぶん消費税の額も自動的に増える。しかも所得に関係なく課されるため、低所得層ほど負担が重い「逆進性のある税」として知られている。

しかし財務省にとっては、こんなに“管理しやすく安定的”な税はない。

  • 所得税や法人税は景気によって上下するが、消費税はブレにくい
  • 給付と連動しないため、使い道の自由度が高い
  • 国民が「自動的に払っている」感覚で反発が少ない

そのため、減税は絶対に認めない。たとえ物価高で家計が苦しくなっていても、「国の財政が厳しいから」として消費税維持の論理を展開する。

財務省への不信と“解体論”の根

こうした状況に対し、いま一部の市民やSNS層の間では、「財務省解体」を求める声が強まっている。

  • 国債発行の判断が硬直的で、災害対策や少子化対策が遅れる
  • 歳出を人質にして各省庁を支配し、内閣よりも強い
  • 財政赤字の“演出”で、国民を増税に誘導している

これらは陰謀論ではなく、過去の予算編成の過程や、議事録、OBの証言からも裏付けられてきた。

実際に「財務省が政治を操っている」との疑念は、保守層・改革派問わず共有されつつある。

本当に必要なのは「財政の民主化」

では、財務省を批判するだけで済むのか? 答えは否だ。

必要なのは、「国の財布」を誰がどう使うのかを、もっと国民に開かれた形で議論することである。

  • 透明性のある歳出の評価制度
  • 財務省とは別の「独立財政審議会」の設置
  • 通貨発行や国債政策についての教育の充実
  • 国民が“自分の税金の使い道”に関与できる仕組みづくり

日本の財政は、危機ではなく「信頼の不足」によって不全に陥っているのではないか。

それでも「足りない」と言い続ける国

国税収は過去最高。消費税も法人税も伸びている。それなのに、政治とメディアは「財政難」「増税やむなし」と繰り返す。

この構図は、単なる勘違いではなく、「国民を諦めさせ、従わせる」ための情報操作ではないか──。そう考える視点を持つことが、これからの時代にはますます必要になる。

増税か、歳出改革か。その前に、「国民に見える財政」を取り戻すべきではないか。