「また揺れた」「眠れない夜が続いている」 2025年6月末から7月初頭にかけて、鹿児島県・トカラ列島を襲った連続地震。その数は2週間で1000回を超え、最大震度6弱という“群発地震の極致”を体感した住民たちは、心身の疲労の中で静かな恐怖にさらされている。
だが、こうした“揺れの常態化”の中でも、一定の安眠を得る手段があるとすれば。 今、にわかに注目されているのが「室内用ハンモック」である。
揺れが続くとき、人は眠れない
トカラ列島では希望者による避難も始まり、遠隔地ゆえの避難判断の難しさ、家屋の安全性、精神的疲労が問題になっている。 特に「睡眠不足」は生活機能や判断力を著しく損なうため、地震の直接被害が小さくとも住民の生活を脅かす重大な要因である。
ハンモックの特性は「床の揺れから身体を物理的に切り離す」ことにある。構造上、地面と接していないため、横揺れの地震の波を直接受けにくく、ゆっくりとした揺れに変換されることで睡眠中のストレスを軽減する。
防災グッズとしての新しい役割
現在、市販されている室内用ハンモックには主に2タイプがある:
- 自立式(スタンド型)
- フレーム付きで設置が容易、壁に穴を開けずに使える
- 折りたたみ式や収納バッグ付きも多く、避難所利用にも向く
- 吊り下げ式
- 天井や梁に固定する本格派
- 設置には工事や強度計算が必要な場合が多い
価格帯は5,000円〜30,000円ほど。耐荷重100〜160kgのものが主流で、1人用・ダブルサイズと展開が広がっている。
揺れが睡眠を妨げる構造的理由
災害時の睡眠問題は、避難所におけるプライバシーや照明・音・温度の問題ばかりでなく、「地面の揺れ」そのものが睡眠を妨げるという構造的課題がある。
トカラ列島で続くような“細かいが頻発する揺れ”は、就寝中の無意識領域にストレスを与え、自律神経を乱す。結果として疲れが取れず、慢性化すれば精神的疾患や生活習慣病のリスクも上がる。
その点、ハンモックは「揺れの伝達を間引く」「包まれる安心感」「通気性の良さ」など複合的に安眠に貢献しうる。
眠れない夜にこそ役立つ特性
- 揺れの直接的な伝達を避けられる
- 冷感素材や通気性の良さで夏の暑さ対策にも有効
- 組み立て式で移動が簡単、避難所・自宅の両方で使える
- 子どもやペットとの併用も可能(安全対策は必要)
また、防災グッズとしてのハンモックは、椅子や物干しとしての応用も可能であり、汎用性の高さが注目されている。
慣れや体質による“向き・不向き”
もちろん、万人にとってハンモックが最良とは限らない。
- 揺れに酔いやすい人
- 腰痛持ちの人
- 起き上がりにくい高齢者や妊婦 などには不向きな面もある。
また、特に多く指摘されるのが「慣れの問題」である。
- 最初の1〜2日は揺れや姿勢に違和感を覚える人も多く、慣れるまでに時間がかかることがある。
- 寝返りが打ちにくい、落ちそうな感覚が不安につながるとの声もある。
このため、使用する際には以下のような工夫が有効だ:
- 最初は短時間の仮眠から試す
- 幅広タイプや安定感のある自立式を選ぶ
- マットやタオルでフィット感を調整する
だが、地震に強い「吊るされた睡眠空間」として、ハンモックを備災・避難の視点から見直すべき時期にきている。
たとえば、
- 学校や公共施設にハンモック型寝具を備蓄
- 自治体による「持ち出せるハンモック」配布
- 家庭の防災用品として常備 といった政策提案も現実味を帯びる。
防災・日常兼用モデルの特徴
2025年時点で注目されている製品には、以下のようなものがある:
- Susabi ダブルサイズ自立式ハンモック:コロンビア製、高耐荷重で安定感抜群(25,000円前後)
- LifeFair 軽量折りたたみ式:屋内外兼用、価格もリーズナブル(9,000円前後)
選び方のポイント:
- 自立式か吊り下げ式か
- 耐荷重と身長の適合性
- 設置スペースと収納性
- 素材の肌触りと通気性
地震列島に求められる「吊るす睡眠」
トカラ列島で続く揺れの中、私たちが改めて問われているのは「どんな備えが本当に命を守るのか」である。
眠れない夜が続く今、防災・快適・携帯性を兼ね備えたハンモックは、単なるキャンプ用品から暮らしを支える“新たな選択肢”へと進化しつつある。
今こそ、「吊るす睡眠」で生活の質を守る知恵が求められている。