1. メディアとSNSが作り出した「晴海フラッグ叩き」

東京都中央区・晴海フラッグは、オリンピック選手村跡地に整備された東京湾岸最大級の再開発住宅だ。その特異な経緯や規模ゆえ、YouTuberや一部メディアから過剰に注目され、「チャイナタウン化」「ゴーストタウン」「無法地帯」といった刺激的な言葉で語られることが増えている。

これらの言説は、しばしば事実に基づかない。取材も居住経験もない人物による主観的な感想や噂話が、SNSで増幅され、まるで“現実”であるかのように拡散されてしまっている。

だが実際には、晴海フラッグはごく普通の都市生活者が暮らす街であり、むしろ極めて良好なコミュニティと環境が形成されつつある。ここでは、その“誤解と真実のギャップ”を冷静に検証する。

2. 応募倍率数百倍──選ばれた人しか購入できなかった街

晴海フラッグは、コロナ禍以降の販売から高倍率物件として知られていた。一部住戸では倍率300倍を超えた抽選もあり、タワー棟の最終期販売では600倍を上回った部屋も存在する。
つまりこの街は、単に買えたというだけでも、都市部の居住空間としてはきわめて希少な存在だ。

この競争率の高さは、晴海フラッグをめぐる言説に少なからぬ影響を与えている。抽選に外れた人々がSNSで不満や皮肉をぶつけるなかで、事実に基づかない「叩き」が常態化してしまったのである。

3. 子育て世代に人気──“子供の声が響く街”の実態

最も誤解されている点の一つは、晴海フラッグが“寂しい街”“ゴーストタウン”だとされることだ。
実際には、子育て世代が多数入居しており、毎日どこかで子供の歓声が上がっている。公園や敷地内広場には、ベビーカーを押す親子連れや子どもたちの姿が絶えない。

特筆すべきは、子育て世代どうしのコミュニティの強さだ。
地縁も親戚付き合いもない新しい街でありながら、子どもを通じたご近所づきあいが自然に育まれており、「都市では珍しい顔の見える暮らし」が日常になっている。

また、当コラムの編集部スタッフもこの街に賃貸で居住しており、分譲当選とは無関係の立場から実情を観察している
所有・非所有を問わず、住民同士の距離が近く、支え合う雰囲気が生まれている点は、晴海フラッグならではの特徴だろう。

4. 街の暮らしを支える“食の拠点”──サミットの存在感

晴海フラッグに併設された「ららテラス HARUMI FLAG」は、日々の生活を支える重要な拠点となっている。
中でもサミットストアは、湾岸エリア屈指の品揃えとクオリティを誇り、特に総菜コーナーの味付けは評価が高い。実際に近隣エリアからもわざわざ買いに来る人がいるほどで、住民の間では“ちょっとした誇り”にもなっている。

このように、生活利便性は既に十分に整っており、「ゴーストタウン」とはまったくかけ離れた実態がある。

5. 中国人は“問題”ではない──富裕層が選ぶグローバルな街

外国人住民が多いという点も、しばしば誤解の対象となっている。特に中国人住民の存在が「チャイナタウン化」と揶揄されるケースが見られるが、それは完全に的外れだ。

晴海フラッグに住む外国人の多くは富裕層であり、教育意識が高く、マナーも良好である。
実際に、日本語教育に積極的な家庭も多く、地域社会の一員として違和感なく溶け込んでいる。
こうした状況を一部の闇民泊や白タク報道で「無法地帯」と表現するのは、むしろ差別的偏見の再生産に他ならない。

6. 東京一の“絶対眺望”──レインボーブリッジを望む日常

晴海フラッグのタワー棟南側からは、レインボーブリッジと東京湾を一望する“絶対眺望”が広がる。
これは、晴海ふ頭の突端に位置する地形的条件により、将来も遮られることのない“永久眺望”とされている。

6月のタワー棟内覧会の開催でSNS上でも「東京で一番の絶景」「湾岸タワマンの中でも別格」といった評価が多く、街のブランド価値にも直結している要素だ。

7. 再販価格は2倍──“転売批判”は筋違いか

転売や再販価格の高騰もたびたび問題視されるが、それは裏を返せば「街の評価が実需と市場の両方から裏付けられている」という証拠でもある。

タワー棟に関しては完成前から既に一部住戸は販売価格の2倍以上での取引が報告されており、投資物件としても高い競争力を持っている。
これを“投機的でけしからん”と決めつけるのは、都市住宅の二面性(生活の場+資産)を理解していない短絡的な見方だと言えるだろう。

8. 都心アクセスは悪くない──BRTと湾岸の生活動線

交通アクセスも、批判ほど悪いわけではない。湾岸エリアの主な移動手段はもともとバスとマイカーであり、鉄道至上主義の視点では本質を見誤る。

特に「東京BRT(バス高速輸送システム)」は、晴海フラッグから新橋までノンストップで運行しており、非常に利便性が高い。都バスも複数の路線が運行している。
当コラムスタッフも毎日利用しており、朝夕の通勤時でも短時間で銀座まで通勤できる環境が整っている。

9. NHKが火をつけた“ゴーストタウン報道”という異常

とりわけ、NHKが2024年に行った「晴海フラッグ=ゴーストタウン」報道は象徴的だった。
これは公共放送としての中立性を欠くものであり、現地の生活実態とはまったくかけ離れていた。
実はこの報道には、抽選に落選したNHK関係者の存在が背景にあるのではないかと囁かれており、実際に東京都庁の担当者からも「不当な報道姿勢に対する強い憤り」が聞かれた

また、「価格高騰」に対する批判も、晴海フラッグ特有の問題ではなく、東京23区全体の住宅価格上昇トレンドの一部である。
さらに就学児童の人口急増に対応するため、中央区は500メートル先に第二校舎を建設中であり、教育インフラも着実に整備されている。
どこが“ゴーストタウン”なのか、むしろ問いたいのは住民側である。

10. おわりに

誤った情報があたかも事実であるかのように拡散される時代において、静かに、しかし実感に根ざした情報を伝えることが求められている。
晴海フラッグは、確かに話題性のある街だ。しかし、そこに暮らす人々にとっては、毎日の暮らしが積み重なっているだけの“普通の街”でもある。

それを、公共放送までが煽動的に切り取り、“叩きやすい政治の象徴”に仕立てあげるのであれば、それはメディア自身の矛盾でもある。