はじめに——「若者は政治に興味がない」は本当の真実か?
インターネット、スマホ、SNS──このデジタル時代に生まれ育った Z世代(1996~2012年生まれ) は、「選挙に行かない」「政治には無関心」と評されがちだ。しかし本当にそうだろうか?実際には、形や方法を変えて政治参加を試みる「ポリティカルトレンドの変化」が見られる。
本稿では、Z世代世代の政治・社会意識を統計データ・事例・インタビューから分析し、「政治離れ」は本質的な評価とは言えないことを示します。そして彼らが未来をどう変えようとしているか、その可能性と現実を検証します。
1. Z世代とは?——価値観の地殻変動
- デジタルネイティブ:SNSや動画を通じた情報接触が当たり前
- 多様性重視:LGBTQ・ジェンダー・環境・国際性を尊重する傾向
- 実践的エンゲージメント:オンライン署名・ボイコット・気候マーチなど行動的
社会意識としては、「誰かに言わされる政治」ではなく、「自ら道を選ぶ政治観」が育っているのが特徴です。
2. 選挙離れ?実は「形の変化」にすぎない
◯ 選挙率の低迷
実際に、18~29歳の選挙投票率は他年齢に比べて低く、2022年衆院選でも約50%前後に留まりました。
◯ 背景分析
- 都市型居住者の多くが**「転居未届」で選挙権行使困難**
- 物理的な投票所に足を運ぶ時間が取れない
- 政治家や制度そのものへの信頼が低い
◯ 投票以外の参加方法
- 選択肢の多様化を支持する政策メディアの購読
- インスタグラムやTwitter上でのリツイート・署名
- 地域コミュニティやNPO参加、社会起業
要するに、**「政治から離れている」のではなく、「別の形で向き合っている」**のです。
3. データで見る関心度——無関心とは別の言葉
- **内閣府調査(2023年)では、18~29歳の政治への関心率は約60%**で、40代とほぼ同等。
- 世界経済フォーラムなどの調査でも、「気候変動」「ジェンダー平等」「格差問題」には他世代以上に関心を持つという結果が多く、「政治的無関心」というフレーズはミスリーディングとも言えます。
さらに、SNSでの社会署名や政治的ハッシュタグへの参加率は非常に高く、「ポリティカル・スラッシング」(政治的関心はあるが、選挙以外の形で示す)傾向が見られます。
4. 活動事例——Z世代が切り拓く新しい政治空間
◯ 気候マーチ(Fridays for Future)
欧米発祥の気候変動アクションが、日本でもZ世代を中心に「学校を休んで参加」するムーブメントに。選挙とは別の形で「声を届ける手段」として機能しています。
◯ 学生ボイコットと署名運動
安保法制反対、LGBTQ平等、教育費の値下げなどで、学生たちがSNS発信や署名・自治体への要望で政治に圧力をかける活動を活発化させています。
◯ デジタル・コミュニティと政策ラボ
オンライン政策ラボでは政策志向の若者が、実際に政治家・自治体と連携して施策を設計・検証する試みが始まっています。これは既存の「官と国民」という構図を超えた、協働型公共性への転換です。
5. ポスト選挙政治——Z世代が描く未来の「政治実装モデル」
- 分散型エンゲージメント:参加はオンライン・オフラインを問わず「都度性」。決して一選挙年ごとの接点ではない。
- 政策共創の習慣化:市民政策コンテストやクラウドファンディングを通じた施策創出と実装が一般化。
- 遠隔投票・電子投票:デジタル投票・電子署名など新しい投票方法の本格導入が進む可能性。
6. 課題と現実的展望
- 制度の古さ:転居・未登録問題や期日前投票・電子投票の法整備が遅れる。
- 情報の信憑性:SNS上の情報リテラシーが高まる必要がある。
- 継続性の問題:気候アクションなどは熱量が一過性に終わるとコミュニティが疲弊しやすい。
それでも、「政治離れ」というレッテルは誤解を招き、Z世代の社会参加意欲を軽視する危険があります。
未来を変えるのは、選挙より「日々のアクション」
Z世代の政治離れとは、本質的には「彼らが選挙という古典型から外れているだけ」です。これからは「選ぶ社会」ではなく「共につくる社会」の時代。
ポストSNS時代、日本社会の未来を描くのは、まさにこのZ世代なのではないでしょうか。そしてそれを後押しするのは、政策側の受け皿と、既存制度の柔軟な転換なのです。